劇場大ヒット公開中の映画『かくかくしかじか』。
原作となる漫画『かくかくしかじか』を描かれた東村アキコ先生は、映画化された今作にたくさん携わっていることを知りました。
今までの日本映画にはなかった「原作者が映画化にあたり、最初の企画の段階から、3、4年間に渡り全編を通して携わられている」前代未聞の映画作りの様子を記事にまとめました。
東村先生の祖母の家で、絵画教室のシーンを撮影。ロケハンの案内も
原作者の東村先生はロケハン(撮影前に、撮影場所の確認や下見を行うこと)に、関監督やプロデューサーの方達と一緒に行き、案内をされたそうです。
自伝の漫画が原作になり、撮影をする場所は原作者にしか分からないため、「この海はここですよ」、「金沢のこの場所はここですよ」と実際の場所を回られたそう。
実体験をされている原作者自ら、実際の場所を案内するというのは作品の充実度・リアルさに直結していて、すごいことです。
そして、映画での日高先生の絵画教室は、なんと東村アキコ先生のおばあちゃんの家になるそうです。ロケハンで行った時に、絵画教室の撮影はおばあちゃんの家に、ということになったそう。
撮影をする期間に、おばあちゃんの家の空いている棟を撮影のセットとして改装し、実際の日高先生の絵画教室の環境を再現しています。
通われていた宮崎西高校も実際に校舎、教室を借りて撮影。
高校の生徒さん達もエキストラとして出演され、主役の明子役の永野芽衣さん、クラスメイトの北見役の見上愛さんも、宮崎西高校の制服を着て演技をされたそうです。
映画に登場するたくさんの絵の美術監修
映画の中に登場するたくさんのデッサンや油絵の手配と用意も、東村先生が美術監修として携わられています。
自画像の大きな80号の3枚の油絵は、年に1回授業に行く金沢美術工芸大学の方々に描きに来てもらえるようにお願いをし、金沢から3人の女性が来られて、東村先生の家に泊まりこみで描かれたそうです。(地塗り、マチエールと仕上げは、東村先生も作られていたそう)
金沢美術工芸大学で行われた合評会のシーンでは、実際に当時東村先生を指導した大学の先生が出演されているそう。合評会のシーンに出演する学生さん達も、大学に通う現役の学生さんになり、並べられているデッサンも実際に学生さん達が描かれているそうです。
(2023年まで使用されていた金沢美術工芸大学の旧校舎で、撮影が行われています)
デッサンが何枚も必要となる日高先生の絵画教室のシーンでは、当時絵画教室に通っていた生徒さん達が集まり、実際にデッサンを描いたり、絵の準備に協力されたそうです。
そして東村先生が高校時代に描いた石膏デッサンも、なんと映画に登場しています。
(絵画教室の後輩の方が、お手本として使われていたデッサンを保管されていたそうです)
映画に登場するリアルで説得力のあるたくさんの絵も、見どころです!
若手の脚本家さんと相談しながら脚本を手作り
脚本は東村先生と、若手の脚本家・伊達さんのお二人で手作りで脚本を作られています。
東村先生はそれまで脚本を書かれたことがなく、2時間の映画の尺が分からなかったため、ベースになる脚本を伊達さんが作られて、そこに東村先生がセリフのニュアンスや、方言を宮崎弁に直したりなど、脚本を足したり引いたりされているそう。シーンの構成も、相談しながら往復書簡のような感じで何度も直して、時系列を整理しながら作られています。
その後、実際の映像化にあたって、関監督とプロデューサーの方達が、東村先生の仕事場に来られて脚本について話し合いをよくされていたそうです。
撮影現場での演技のアドバイスや方言指導
漫画の連載を1か月間お休みをもらい、撮影の現場にも東村先生は、朝から晩までほとんど居られたそうです。(宮崎、金沢、東京の各ロケともに行ける時は行かれていたそう)
東村先生の記憶の中にある人物の動きや、木炭デッサン・漫画を描く動きなど、演技のアドバイスも撮影現場でされていたそうです。現場に東村先生が居ることで、主役の明子を演じる永野芽衣さんは、歩き方や姿勢、動きなどを実際に観察することができ、東村先生によく似ている演技になっているそう。
また宮崎弁の方言指導は、東村先生と、なんと同じ宮崎西高校の同級生・畑中さんのお二人でされたことから、映画では良い感じの宮崎弁が再現されているそうです。(畑中さんは、ご自身の仕事をリモートワークでされながら、方言指導に携わられていたそうです)
主役の明子の衣装についてや、お父さんのまゆげの形と髪の毛をはねさせて似せたり(実物の東村先生のお父さんにかなり似ているそう)、多岐に渡るアドバイスをされ、原作者しか分からないリアルな世界を映画にたくさん吹き込まれています。
「原作者も全編を通して、制作チームに加わる」前代未聞の映画作り
関監督は、「アキコさんの自伝になり、アキコさんがセリフやストーリーを考えて書いてもらわないと、この映画がしまらないんじゃないか」と最初に考えられ、プロデューサーも含めて、みんなで最初からチーム一丸となってやりますという映画作りになったとのこと。関監督と東村先生は同じ年齢になり、良いコンビでやりやすかったそう。
原作者も全編を通して、制作チームに加わるという映画の作り方は、日本映画において今までにない新しいことになり、すごいことだと思います。
すてきな作品をありがとうございます。これからのご活躍も楽しみにしております~!
…………
少し話はそれてしまうのですが、東村先生の同じ代表作のひとつである漫画『雪花の虎』の主人公は、戦国時代の越後国の名武将・上杉謙信公になります。上杉謙信公は女性ではないかという説もあり、『雪花の虎』は、その上杉謙信公を女性として描いています。
ブログ運営人のふかみどりは新潟県上越市生まれになり、2030年には上杉謙信公の生誕500年を迎えようとしています。(上越市には、上杉謙信公の居城として知られる春日山城跡があります)
フランスの第47回アングレーム国際漫画祭 ヤングアダルト賞を受賞した『雪花の虎』も、いつか映画化されたらなぁ~と思っています!
(残された品々、着物などを見て、私も上杉謙信公は女性ではないかと思っている1人です。アキコ先生のセンター試験対策のダウジングでさらに鍛えた直観力は、やはりすごい・・・と思う越後の民です)
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